治療室便り(ブログ)

夏の見送り

歳時記

安らぎに出会う前の 疲れにも似た 迷いの中 (君の歌)

9月とは思えない暑さが続いております。当方この夏は思いがけないお別れや、法事ごとの多い頃となりました。

この仕事を始める以前より心温まる励ましをいただいていた大恩あるT先生。ご自分のお身体の様子を見つめながら、ご家族をはじめいろいろな方と協力をされ、症状と向き合いつつ飄々と過ごされていました(私にはそう思えていました。身近なご家族様にはそんなものではなかったことと、今思われます)。「もっと施術の腕をあげてから伺おう」、「この暑さが一息ついたら音沙汰しよう」 思えば、その機会のあった先生へのケアの一端を担うことができなかった無念、おぼつかない技量への無力感。急な報せに言葉なく呆然としておりました。

「ギターを持ってきて歌ってください」お疲れの上、沈痛なご様子のご家族様から確かにそうお聞きしたとき、私は少し混乱しながらうろたえました。けれどもかつての日々に先生と共に奏でた音楽は最高に楽しかったことを思い出し、そっとギターを車に積み、いつでも逃げ出せるつもりで、懐かしい町に向かいました。先生を慕われて多くの弔問者がみえられ、お式が厳かに済み、ご親族様の前で私は自身の至らなさや不遜さをぶち上げて歌いました。シャウトといってもいいでしょう。

T先生、ずっとご心配をかける未熟者ですみません。遺影に向かって喉をつまらせる僕の声は届きましたか。最後までこうやって奮起を促し元気でやれよと背中を押してくださったのでしょう…。あの日のギターだこを指にとどめたまま治療に向かいます。後悔しないようにやってみます。